それにですね、図書館で『女王国の城』を見つけて手に取ったら血痕とも見えるような染みがベタッと残っていて、さすがにそれはと遠慮させていただいた……なんてこともありまして
まあ、そんなわけで『月光ゲーム』です。バカミスで大笑いした後だし、直球ど真ん中の本格ミステリーもいいんじゃない。いっちょこの謎解いたろやないかい!。なんて意気込んで読み始めたのは良かったんだけど、主人公はじめこの登場人物達は生き延びる事が出来るのかい?と心配になっていき、いつの間にか犯人探しはどうでもよくなってしまいましたよ。オイオイ。
悲劇の舞台は浅間山系に連なる山の一つ、矢吹山にあるキャンプ場。標高二千四百米のその山は十年前に小規模な噴火を起こした休火山であり、それ以来キャンプ客の足も遠退いていました。
そんな山に夏合宿へとやってきたのが、僕こと有栖川有栖が所属する英都大学・推理小説研究会の面々。部長の江神二郎、二年生の望月周平と織田光次郎、そして僕の四人でした。
彼等は麓の温泉地へと向かうバスの車中で、目的地を同じとする雄林大学ウォーク部一行七名と、神南学院短大英文科の女の子仲良し三人組と知り合いました。さらにキャンプ場には先客がいました。雄林大学法学部のゼミ仲間の男三人。
旅は道連れ世は情け。偶然にもこの日同じ場所に集った同年代の男十一人女六人、自然と意気投合し食事を供にしたり、キャンプファイヤーを囲んで交流を深めていきました。
うーん男女十七人夏物語だね、って古いよお前さん。しかしただでさえ登場人物が多いのに、みんな特徴の少ない大学生だから、慣れるまでが一苦労でしたよ。以上脱線終わり。
さて、楽しさのあまり当初の予定を変更して、滞在を延ばす組も現れました。そんな中で僕は神南学院のグループの一人、理代に心惹かれていくのでした。
ところが三日目の朝にそれは起きました。神南学院組の一人山崎小百合が先に帰るという書き置きを残して、姿を消してしまったのです。
心配した一同はまだ遠くへは行っていないだろうと、その後を追おうとしました。しかしその矢先、眠っていたはずの矢吹山が火を噴いたのでした。
降りしきる火山灰を避けるように林へと逃げ込み九死に一生を得た彼等でしたが、山崩れにより下山道は塞がれ、山の中で閉じ込められてしまいました。
しかも、彼等を襲うのは火山灰だけではありません。本当の悲劇はこれから始まるのでした。
それは四日目の朝、彼等が目覚めると、なんと林の中で雄林大ウォーク部の一人、戸田文雄が何物かによって刺し殺されているのが見つかったのでした。その傍らにYの文字を書き残した状態で。

山崩れにより帰り道を閉ざされたキャンプ場。屋外型のクローズドサークルで起きた殺人事件を描いた作品なのですが、こういった緊急事態の場合は犯人探しに躍起になるよりも、まずは全員が無事安全なところへと帰還する事を第一とし、また第二第三の事件が起きる事を防ぐ為にも全体が行動を一つにし、互いを監視しあう(言葉を変えるなら互いが互いを守る)のがセオリーだと思うんですが、グループで固まって疑心暗になったり、一人気ままに山の中をふらついたりするもんですから、このままで大丈夫かしらこの人達とハラハラしてしまいましたよ。
それに火山が噴火する度に林へと駆け込むならもっと林に近い所でテントを張るか、それこそ林の中に寝床を作ればいいのにと思ってしまいました。本来ならば溶岩流や延焼の危険もあるんだろうけど、読むかぎりはそこまで規模の大きな噴火とは思えなかったし。
そして謎解きの方は、状況証拠から推理するんじゃなくて、この殺人が何故起きてしまったのか、計画的犯行かそれとも突発的犯行か、そして山崎小百合の行動と殺人の因果関係はあるのかという面から消去法で色々考えていたら、一人が明らかに不自然な行動を取ってくれたもんで、犯人だけはなんとなく目星がついてしまいました。
しかし可能性として、共犯の存在、いないはずの人間がいるってのも捨てきれなかったし、それぞれの事件についてきちんと筋道立てて説明できるかといえば、完全にお手上げ状態だったので、最後に江神が謎解きをする場面ではオーッ!と一人拍手喝采でした。
ただですねー、どうしても引っ掛かったのが動機です。私の感覚からすると不十分にも思えました。それで二人の人間を殺してしまうのかと。その辺りの思い詰め方や、状況が生んでしまった自暴自棄も含め、青春ミステリーなのかなあ。
でも江神のミステリアスな雰囲気はいいですね。続編を読んでみたいと思いました。
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