しかし、呼ばれることが多い人生でもある。その日、ヨシノは大学時代の友人の友美から結婚する旨の文を受け取った。ついては友人代表のスピーチと二次会の幹事をしてはくれないか、という依頼とともに。相手の男性も同じサークルの仲間であり、ヨシノもよく知っている人間だった。
結婚式の日取りが、ちょうど申し込んだばかりの旅行の日程と重なってしまっており、まだ見ぬ屋久島の景色を頭にヨシノは一瞬だけ躊躇ったものの、友人の頼みを快く引き受けたのだった。
そして当日。近場の式で油断していたのか、ヨシノは寝過ごしてしまう。慌てて支度をし式場へと向かった。携帯には知らない番号からの着信履歴が残っていたが、どうせろくなものでもないと無視した。二次会の問合せ先については、新郎側の幹事を受け持った後輩のコタニ君に一任していた。今日、結婚式関連でいきなり自分に連絡がくる事はないはずだった。
式場に着くと、見るからに具合の悪そうな知人がいれば、コタニ君はコタニ君で今日の結婚式を機に停滞していた恋人との関係を一気に進展させるのだと、当の主役達以上に緊張で引き攣っている有様だった。それでも仏前の式はつつがなく終わり、あとは披露宴、そして2次会へと移っていくはずだった。
ところが、その時ヨシノの携帯に再びかかって来た電話が事態を急転させてしまう。あまりのしつこさに出てみれば、それはヨシノの会社の常務からの電話であり、マジマ部長の父上が亡くなられたので、御通夜に出席するようにというのだ。
ヨシノの会社は小さいアットホームな会社で、その分、そういった場合には社員全員で臨むのが常であったのだった。

てなわけで、津村さん再び。文春の来るべき作家たちからの刊行だったんですね、この本。津村さんは文學界新人賞じゃなくて太宰治賞出身のはずだったから、これはちょっと意外でした。何というか、このシリーズの基準が分からなくなってきたような。その名の通り来るべき作家たちなのは別として。
さて、私はてっきりこの本は結婚式と葬式が重なってしまい、あっちとこっちを行ったり来たりするようなドタバタ話だと思っていたのですが、ほんのちょっとだけ違いました。ドタバタはするけど、一応結婚式は途中で抜けて、そこから通夜へと向かう形です。
しかし……通夜の連絡を受けた際、ヨシノは常務から特別な事情が無い限りは顔を出すようにと言われるのですが、この場合は結婚式を優先してもいいんじゃないかって思いました。世間的な儀礼では葬儀を優先となってはいてもね。だって結婚式の方は友人二人の挙式でスピーチと幹事も頼まれていて、それに対し通夜の方は上司の父親と言う面識の無い相手であり、どちらかといえば手伝いとして借り出されるわけですから。
ヨシノ自身も実際にその辺には戸惑っていてたんだけど、えっとと悩んでるうちに電話を切られてしまい、式に参加していた他の友人に相談して葬式の方に行くのでした。あそこはなんで電話に出ないの?と問われた時点で、すぐさま友人の結婚式に出席中でしてと答えちゃえば良かったのに。
まあそんなことを言ってしまうと何もかも始まらなくなってしまうわけで、結婚式を抜け出して来てみればこんな有様かよ!っていうこの作品の面白さも消えてしまうから、身も蓋も無いんだけど。
そう、ひどいお葬式なんですよ。故人は教育者として外面は良かったみたいだけど、家族には傍若無人ぶりを発揮していたらしく、孫に悲しくもなんともないと言われているし、挙句の果てにはお妾さん同士が鉢合わせして取っ組み合いになったり。
それらにことごとく巻き込まれ、同時に結婚式の方のトラブルに携帯を通して対処しなきゃいけないヨシノには、悪いとは思いつつ笑ってしまいました。
自分のしたいことや都合と世の中の常識やら世間体をすり合わせて、どうにかこうにか日々をやり過ごしていくんだけど、物事はそんなこちらの苦労もお構い無しに、それこそ悩んでる自分をあざ笑うかのように裏目裏目へと回ってしまう。そういう誰の身にも置きそうなドタバタをうまく書いてます。
私もこの前ケーキを買いに行ったら、定休日→本日都合により早く閉店→回っているうちに他も閉店
もちろん可笑しいだけじゃなくて、それが最後に収まるところにもこの作品の良さがあるのですが、それはドタバタを切り抜けてこそなので、読んでお確かめ下さい。
また表題作のほかに、一つの自転車事故をきっかけに浮き上がる人々の感情を書いた『冷たい十字路』という作品も収録されています。映画の『クラッシュ』や『バベル』のような作りの話なんだけど、もっとスケールを小さくして、日々の中で人々が抱えている苛立ちや疲弊感、さらには他者への無関心さなどを描き出した作品です。一転して暗い話ではあるんだけど、実はこちらの方が私としては好み。
私も自転車愛用者で運転には気をつけなきゃとは思っているんですけどね、最近問題になってる自転車事故の多発については、乗っている人間のマナーだけでなく、自転車で走ることを考慮されていない道路の状況ってのもあるのではないかと思います。
向こうから2、3列で横並びに走ってきて、そのまま間をつめながらキャー危ないよーとか叫ぶアホたれに殺意を覚えることのも多々ありますが……。1列になりゃええだけじゃ、この糞ボケがああああ!!
すいません、いらん感情爆発をしてしまいました。田舎の場合は相変わらず車の方も問題が多くて、ウインカーを出さずに曲がってくる車とか、歩道を駐車場代わりにしている車に辟易させられるのは日常茶飯事だし、やはり専用レーンを設けてそれぞれを分離させるのが一番なんでしょうね。



