このところ町内では犬や猫を狙った事件が続けざまに起きていた。ミチオはS君の家へ向かう途中、空き地に乗り棄てられた車の中で猫が死んでいるのを発見してしまう。
猫は足が折られ、口には石鹸を詰められていた。それは、連続動物殺しの特徴と一致していた。
恐ろしくなって、その場から慌てて走り去ったミチオだったが、S君の家で待ち受けていたのは、それすらを凌ぐ衝撃であった。
ミチオは息も切れ切れにS君の家の前にたどり着くと、ドアの横の呼び鈴を押し、S君が出てくるのを待った。S君は母親と二人暮しで、その母親も日中は仕事に出ていた。
しかし家の中からは何の反応もなかった。ノブに手をかけてみると、すんなりとドアが開いた。鍵は掛けられていなかった。その隙間から声をかけたが、それでも返事はなかった。
玄関にS君の靴が置いてあるのが目に入り、ミチオは庭の方に回ってみる事にした。辺りでは蝉の鳴き声がけたたましく響いていた。
庭中に生い茂る木々を横目に、一枚だけ開いた奥の窓へと近づいていくと、きいーきいーというおかしな音が聞こえて来た。音は奥の窓に近づくほどハッキリとしてきた。
ついに窓の前まで行き、部屋の中を見ると、そこにようやくS君の姿があった。S君は小さな円を描くかのように不自然に体を揺らしていた。その足先はどこにも付くことなく、浮いていた。
何が起こっているのか理解したミチオは恐怖のあまり、学校まで駆け戻ってしまった。職員室へと入り、担任の教師にS君の家で目にしたものを告げた。涙が止まらなかった。
ミチオの話を聞いた担任は驚き、警察に連絡をすると自身も慌ててS君の家へと向かった。ミチオは他の先生に付き添われ家へと帰った。
しばらくして担任と一緒に警察の人がミチオの家にやって来た。戸惑い顔で彼等はミチオに尋ねた。「本当にS君が首をつっているのを見たのか?」と。
なんと、S君の家にはS君の姿がないどころか、なんの異常も無かったのだと言うのだ。ミチオは確かに見たと答えた。警察が調べた結果、それを裏付ける痕跡も直ちに発見された。
S君の遺体は、何者かによって持ち去られたのだ。誰が?一体なぜ?
困惑したミチオはS君の死の謎について妹のミカと二人で調べ始めた。そして、その矢先、S君が彼等の前に変わり果てた姿で現れた。
S君は自分を殺した犯人の名前を二人に明かした。それはミチオもよく知る人物だった。三人はその証拠を掴むため。失くなってしまったS君の体を探すことにしたのだった。

今回の続きは種が割れてネタバレだらけです。お気を付けください。
『カラスの親指』がかなりよくて、もっと道尾さん作品を読みたいぞ!とこの本を手に取ったのですが……。もうね、超モヤモヤです。読み終わるどころが、読んでる最中からモヤモヤ〜モヤモヤ〜。
いつもなら道尾さんの作品は一度手にとったら最後、結末までノンストップで読みきっちゃうんですけど、今回はかなり時間がかかりました。
そもそも児童虐待、主にネグレクトがテーマの一つになっているってのもあるんだけど、それ以上にミチオが明らかに信用できない語り手であることが見てとれて、憂鬱な気持ちにさせられちゃうんですよね。
信用できない語り手の物語は決して嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きな方なんだけど、この場合は虐待とその引き金にもなったのであろう何かしらの事件が原因となって、ミチオの精神を倒錯させてしまっているのが窺えるだけにしんどかった。
妹のミカの、三歳とは思えないほどの利発な物言いからして、その事件はおそらくミカに関するものであり、ミチオが何かに対し既に存在しないミカの姿を投影してしまっているのではと想像ができたのもそう。
ただそうやって核心の一部分が見えていても、思いもよらなかった結末へと結びつけるのは道尾さんならではで、また驚かされました。
二人が同じものを見ていたように見せて、実はまったく違うものを見ていた事とか、塗り重ねられていく物語というのは、これっぽっちも意識していませんでしたよ。
しかし、一番やられたのは、こちらの予想のはるか斜め上をいった結末です。自分の中で想定していた最悪の終わりよりもさらに悪いとは。『ラットマン』とは真逆の形でモヤモヤしました。救いが無さすぎるよ。
ミチオの10年後、20年後を想像すると、正直、背筋が寒くなってしまいます。
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