不意の一撃をくらい、気がつけばいつの間にか椅子に縛り付けられていた。大柄で髭もじゃのその男は渡辺に尋ねた。
「勇気はあるか?」
しかしそれは渡辺にとってみれば過去にも経験した、既知の出来事であった。本当の恐怖はまだその片鱗も見せていなかった。
「見て見ぬふりも勇気だ。」
請負中だった仕事を投げ出し、行方をくらませた先輩が渡辺に残した言葉も「勇気」だった。自分の仕事を引き継いだのが渡辺だと知ったその先輩、五反田は、電話越しに警告した。「あの仕事はやばい」と。
しかしながら上司の命に従い、渡辺は後輩の大石と二人、作業先へと向かう。その仕事は、一見すれば、実に簡単なホームページの仕様変更だった。
ところが、いざ取り掛かってみると、妙な事ばかりが続いた。あまりにも曖昧で事足りない指示書。連絡のつかない取引先。仕事をしようにも、その手掛かりすら与えられないのだ。
仕方がないので、先行して取り組んでいた他社のエンジニアと協力し、手探りで作業を進めた。
やがて彼等はとある3つのキーワードを発見する。
「播磨崎中学校、安藤商会、個別カウンセリング 」
そして、それこそが本当の恐怖へと繋がる鍵だった。
今晩は風邪ひき野郎タマネギダーです。ゲホ、ゲホッ。うーん……病は気からと言いますし、起死回生の閃きでどんな窮地からも復活出来そうな勇ましいヒーロー風の名乗りで己を鼓舞してみたのですが、あまり効果は無いようですね。今度はCTU捜査官だと付け加えてみようかな。
しかし、なんとか終末のバトルまでには全快に持ち込まなくては。って、ハルマゲドンかよ、滅びちゃうのかよ。そんでもって世界を救うつもりかよ!。……すいません。正確には週末のレクリエーション大会の間違いでした。
あーもう。鼻水が垂れそうだから、とっとと本の話に参りましょう。「小説家にとって大事な作業のひとつは読者をヘロイン中毒にしちゃうことだ」これは村上春樹さんがかつてジョン・アーヴィングから聞いたという言葉なのですが(※詳しくは「そうだ、村上さんに聞いてみよう」大疑問120.村上作品の中毒症状でしょうか?を参照ください)、この『モダンタイムス』はどちらかといえばそういった類の作品なのかなあと思いました。
これまでの既刊をどれも読んでいて、これがあの『魔王』の続編であるということも踏まえて読んでいる自分にとっては楽しめた作品でした。でもモーニング誌上で伊坂さんの事をよく知らずに触れた人の場合はどうだったんだろうと少し疑問を感じもしました。
渡辺達が立ち向かおうとする大きな存在や、作中で繰り広げられるともすれば青臭い国家観などは、『ゴールデンスランバー』を経ているからすんなり読めたけど、これだけをいきなり読んでいたら、私自身なんだかなーと首を傾げていたかもしれません。
ただ、じゃあ読んでればいいかっていうとそういう訳でもなくて、結局その方向に物語は進んでしまうのかと類似を感じ、物足りなさも多少覚えてしまいました。伊坂さん自信も後書きで兄弟の様な作品と述べてはいたけど、だったら尚更違う場所に辿り着いて欲しいとも思うし。『魔王』の続編ならば『ゴールデンスランバー』の兄弟ならば。
本当に面白い事は面白いんですよ。週刊連載されていた作品という事で短い章の連なりで成り立っていて、次へ次へと引き込む魅力もあれば、章毎に小さなクライマックスや笑い所が用意されているし。電車の中で思わず噴き出しそうにもなっちゃっいました。
ただ、最後にパタッと本を閉じた後に「うーん」とつい苦笑いが出てしまったのも事実で、「あー楽しかった」という会心の笑みにはなれなかったんです。常に最高の満足をなんてのは我が儘な話なんですけどね。
そうそう忘れる所でした。「播磨崎中学校 安藤商会 個別カウンセリング 」で検索しちゃった人、先生誰にも言わないから手を挙げなさい。実は流行りのキーワードを集めた本当のフィッシングサイトなんじゃないかと恐る恐るクリックした人も。ちょっと期待しながら人妻溺愛倶楽部をポチっとした人も。いるんじゃないのか。
じゃあ、今手を挙げた人は後で職員室に来るように。それと、他の人は絶対検索しないように。いいですか「国際パートナーホテル 渡辺拓海」でも検索したら駄目ですからね。「シャクルトン 井坂好太郎 岡本猛」で検索したって何も出てこないから。分かりましたか。では解散。
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