深すぎる傷を背負ってしまった二人の子供と、ひょんな事で彼等と出会った二人の大人。四人は古いビルの屋上に、花で満たされた庭園を作ろうとする。死んでしまった一人の少女のために。
というわけで、続けて小路幸也さん。この『空へ向かう花』は現代のどこかの町を舞台にした作品ではあるのですが、どちらかといえば『キサトア』のようなファンタジーに近いかなあと感じました。
不慮の事故で一人の少女を死に至らしめてしまったハル。決して彼に否があった訳でもなく、悲劇としか言えないような事故。しかし少女の死という現実が否応なしに彼を追い詰めてしまう。
そんな少年と出会い、その命を救ったカホ。親からの虐待という辛い過去を持ちながらも、明るく微笑むその姿がハルの心に光を差し込ませる。
ハルとカホの出会い。これは奇跡のような偶然であり、同時に必然でもある。二人を繋ぎ会わせたものは、今は亡き少女の存在であり、最初に光を届かせてくれたのは、彼女が遺した鏡なのだから。
ハルとカホを支える二人の大人もまた出会うべくして出会ったのかもしれない。花屋でアルバイトをする大学生のキッペイは、商店街の繋がりでカホの祖父と知り合い、彼女の庭園造りに力を貸す。
そして、土手で一人佇んでいたハルに声をかけたイザさん。事故の結果、家庭が壊れてしまったハルにとって、何もかもを受け止めて見守ってくれる大人が現れた事は、大きな安らぎとなっただろう。
謎めいた雰囲気を持つイザさんは、過去になんらかの経験があるらしく、庭作りは一気に加速していく。キッペイとイザさんが居酒屋で語る場面には、少しじんときてしまった。偽善かもしれないけど、何かをしないわけにはいかないというキッペイの言葉が印象的だった。
ハルとカホに出会った事で、イザさんの中の止まった時計が、少しずつでも再び動き出していけばいいなあとも思う。
互いの手をとり芝生に横たわる少年と少女。丘の上に建てられたビルの屋上からは、空へ向かう視線が遮られる事もなく、穏やかな日差しと、柔らかな月明かりが交代で、いつまでも二人を包み込む。これこそ、この世のどこかで存在していて欲しいと私は思います。
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