その経歴によるのかは分かりませんが、実に幻想的な話から、サスペンスにSFと内容も幅広いです。哀れで恐ろしい話ばかりなんだけど、面白くて目が離せませんでした。詳しくは続きで。
ちなみに私が読んだのは死晶文社のハードカバーになるのですが、角川から文庫も発売されていて、微妙に中身が違うようです。文庫化に際し一部改訳、さらには差し替えがなされたみたい。そっちは買って読むとしようかな。

『豚の島の女王』
豚の島として有名なポルコジト島で発見された四つの奇妙な白骨遺体。人類史を揺るがす大発見かと思われたそれは、あまりにも悲しい愛の結末であった。
一本目からあまりに刺激的で面食らいました。ただ朽ち果ててゆくしかなかった少女の恐怖を思うと気がふれそうになるんだけど、それ以上に残された日記の冷静さが悲しい。
『黄金の河』
バーでの与太話にアマゾンの黄金郷なんて正直ベタだけど、でも面白い。語り手をいかに魅力的に描くかが、このての話の成否のポイントですね。
『ねじくれた骨』
うーん説明しづらい。周囲を見渡せば、灼熱の活火山、底無しの流砂からなる潟湖、人食い鰐や鮫が待ち構える運河、そして恐ろしい原住民の潜む密林。陸の孤島とも言える場所に建つ刑務所へと送られた一人の男の語る半生。この話こそかなりねじくれています。
『骨のない人間』
船が港でバナナを積み込んでいた時だ。一人の男が船に乗り込んできた。誰もがその男は狂っているのだと思った。何かに怯え、乗船を乞う男。男は自分は奥地で行方不明となった調査隊の一員であると名乗った。そして自分以外の人間は全員襲われてしまったと言う。「骨のない人間」達に。
ゾッとする話です。未開のジャングルで何物かと対峙する恐怖。その恐ろしさをも吹っ飛ばしてしまう最後の一文。唖然としました。
『壜の中の手記』
オショショコの壜の使用方法や目的は、考古学者たちにとって長年の謎であった。烏賊のような本体から伸びる三本の管。それは口と鼻にちょうどおさまるようになっていた。その形状からある者は楽器であると主張し、ある者はパイプの一種ではと推測した。
1948年。私はメキシコに行った際に、行商人からほぼ完全な状態の壜を買った。各地の土産物の山で埋もれていたその中から、数枚の紙片を発見したのは、それより数年後の事だった。
そこに書かれていたのは、アメリカ文学史上最大の謎を説き明かす、衝撃の内容であった。
歴史の中で表には出てこないような事実。真実ではなくあくまでフィクションとしてのですが、それらを思わぬ形で掘り起こして驚かせる。そういう話がこの本の中ではいくつか書かれているのですが、その中でもこれは面白かったです。オチとしては日本でもとーっても馴染みのあるものなんだけど、そこに至までの過程がエキゾチックでまた面白い。
『ブライトンの悪魔』
1745年、とある港町で打ち上げられた一体の怪物。私はその正体を思わぬ所で知ることとなった。それは人類の常識を覆すものであった。
まさか日本が絡んだ話になるとは思わなかった。そしてこの次に読んだ本で似たようなネタがあったことも驚き。
『破滅の種子』
呪いの指輪の誕生にまつわる秘話。偶然なのか、それとも言葉が力を生んでしまったのか。短いけど奥の深い話。
『カームジンと『ハムレット』の台本』
ハムレット=ベーコン説をモチーフにした笑い話。今度のベーコンはフランシス・ベーコンです。それって馬鹿馬鹿しい珍説がさらに広がるきっかけを作っただけじゃないの?とツッコミを入れてしまった。最後の一言がまたいいスパイスになってます。
『刺繍針』
密室殺人の謎を扱ったミステリー。怖い、怖いよー。
『時計収集家の王』
偶然知り合った老人が明かす、とある王と国の最後。この本って、そこらで知り合った男の打ち明け話とか、偶然手に入れた手記というように、こっそり語られる話ばかりなんですが、なぜか不思議と飽きません。内容があまりに多岐に渡っているのもあるんだろうけど、それ以上に語りが上手いんだと思います。物凄く引き付けられるのです。
『狂える花』
マッドサイエンティストもの。そもそも研究の発端からして狂ってます。
『死こそわが同志』
最後も狂った男の話。ただし科学者ではなく、死の商人。強力な武器の発明は、それに対抗する新たな武器を生み、それを上回る強大な武器が生まれ、最終的にはと。始まりが愛しのあの子に振られた腹いせなんて正直やってられないけど、意外と歴史なんてそんなもんだったりするんですよね。



