今まで読んだ奇想コレクションの中では一番SF色が強かったと思います。アンドロイドにタイムトラベルとSFネタの中でもオーソドックスで馴染みの深いものが多かったからかな。ただその反面、いくら読んでも訳がわからない???な話もいくつかあったけど。
でも最近、そういった訳のわからない面白さが癖になってきてるので、楽しかったです。何でしょう、中毒性が強いですね、こういう話って。一度染まると止められそうにない。やばいな少し。何でもないように見えて実はこれが何々だったらとか空想しちゃったりと、物の見方まで変わってしまいそうです。

『ごきげん目盛り』
バラゴン第三惑星とか第7セクターとか最初はおいてきぼりだったんだけど、途中から目茶苦茶面白くなってきた。アンドロイドの暴走を書いた話。
人に危害を加えられないはずのアンドロイドが殺人を犯してしまい、所有者の男は一切合切をなげうって、そのアンドロイドを伴い他所の星へと逃走する。しかし、逃げた先でもアンドロイドは事件を繰り返し、さらに星から星へと転々していくはめに。
最後には原因が明らかになるんだけど、そこには驚きもなんにもなくて、正直そんなんですかといった感じ。しかし逃走の日々で狂っていく「あたし」の姿が強烈でした。おまけに所有者の駄目っぷりに目も当てられない。
『ジェットコースター』
ちょっと訳がわからなかったんだけど、サイコホラーとタイムトラベルを足したような話。うーんやっぱり分からん。
『願い星、叶い星』
ブキャナンという名字の家を訪ね歩く謎の男。最初はサスペンス調の話だったのが、謎の超能力集団というSFに、さらには追うものと追われるものが逆転したホラーへと転調していくのが鮮やかでした。最後の言葉が妙に可愛いらしいのも面白かったです。
『イヴのいないアダム』
人類の最後を描いた終末もの。灰だらけになってしまった地表を、ひたすら這い進む描写が強烈です。短いんだけど、頭から離れない作品。
『選り好みなし』
戦時中のとある統計学者が、自国の人口が増えている事に気付き、その謎を追っていくと…。これが『壜の中の手記』の話と微妙にオチがかぶった一編。
自分は生まれ時代を間違ってしまった。あと何年早く生まれていたら。そんな現実逃避的願望に対する容赦ない突っ込みが、なぜか笑える。隣の芝生は青いんです。至極真っ当な意見だし、そりゃあその通りなんだけど、ただ最後の言葉だけは落とした側の人間が書いても説得力はないでしょうよ。
『昔を今になすよしもがな』
たまたま開いたページの一文が気になってこの本にしたんだけど、それが実はこの話。
氏名 リンダ・ニールセン
住所 セントラル・パーク模型船用地
職業または勤め先 地球最後の男
最後の男ってなってるけど、主人公のリンダは名前の通り女性です。地球最後の生き残りとなった彼女がジープで街を疾走しながら、図書館や商店で物資を調達していくという始まり。
ちょうどウィル・スミスの『アイ・アム・レジェンド』を借りに行ったら全部貸出中で、悲しみにくれていた時だったから「コレだ!!」と借りちゃったわけです。
しかし何と言いますか……ある意味バカップル。突如リンダの前に現れた男は、一見冷静な人物に思えて実はいかれてるし。リンダはリンダで愛の巣(理想の我が家とようやく見つけたパートナー)の事で頭がいっぱい。ドタバタ恋愛として笑えるんだけど、状況を考えればやっぱり少し怖い話。
『時と三番街と』
思い切りネタバレしてしまうと、これもタイムトラベルもの。この本の中では唯一心温まるほほえましいお話。単純に上手いなあと思わせる短篇。
『地獄は永遠に』
140ページ近くあって、短篇というよりはもはや中編です。この本自体が400ページしかないわけで、かなりの比重を占めているんだけど、それだけのことはある話です。そしてこれだけはSFじゃなくて、幻想的で魔術的なファンタジーホラー。
ある城の地下牢に集った六人の男女。ありとあらゆる快楽を貧り尽くしたという彼等はその日、仲間の一人で城の主でもあるレディ・サットンの為に、悪魔召喚をモチーフにした一幕の劇を行おうとしていた。地上で繰り広げられる爆撃をよそに。
ところがしかし、その劇は心臓の弱かったレディ・サットンに激しい驚きを与え死にいたらしめようとした、他の五人の画策であったのだ。ジャジャッ(火サス風)。
計画が見事に果たされ、レディ・サットンの息が途絶えたその時、思いも寄らない存在が彼等の前に現れるのだった。
先にも書いたようにこの人は物語を転じるのが実にうまいです。二転三転する中でこちらはどんどん引き込まれ、謎と恐怖が積み重なっていく。しかも短篇だからおののき足が止まってしまう事はなく、ジェットコースターみたいにグングン振り回されて、最後には感嘆と爽快さとちょっとの恐怖が残るのです。いやー参った。



